Greetings

ご挨拶

第97回日本細菌学会総会開催にあたって

札幌医科大学医学部微生物学講座 横田伸一
 2020年から3年以上にわたった新型コロナウイルス感染症による様々な行動制限から解放され、多くの社会活動を取り戻すべく感染症対策との両立も鑑みながら試行錯誤の現状と理解しています。これほど人が感染症に向かい合わなければならないと感じたことはなかったのではないでしょうか。治療法の確立、抗ウイルス薬やワクチンの想定をはるかにこえたスピードでの実用化を目の当たりにしました。皆が手探りの状況の中でいくつかの感染拡大の波を乗り切っての今があるとあらためてかみしめています。
 2022年8月に開催された細菌学若手コロッセウムの代表世話人をさせていただきましたが、「学会の参加は初めてです。」の学生さんの声が多くありました。コロナ禍の中で研究者のコミュニケーションの場を失いたくないとつくづく感じました。この間、日本細菌学会も開催形式を工夫しながら年1回の総会開催を維持してきました。状況が見えない試行錯誤の中で現地開催、リモート開催、ハイブリッド開催を模索しながら総会を成功させてこられた総会長の先生方にあらためて敬意を表します。
 ようやく前回の総会で現地開催が再開し、荘厳な姫路城のもとで盛会に開催されました。このたびは私が総会長のご指名を受け、北海道での開催となります。例年通りの開催時期ですと、航空機等の移動の不安定さや、凍結路面での転倒のリスクなどが危惧されます。悩みましたが、リニューアルオープンの札幌コンベンションセンターでの夏の開催とさせていただきました。ぜひいい季節の北海道も楽しんでいただきながら、議論を展開していただきたいと願っています。

 今回のテーマは「One Healthの視点で細菌社会に挑む」といたしました。細菌も細菌叢として社会を形成して、ヒト、動物、それ以外のありとあらゆる生物や環境に常に存在して、協調関係を維持しながら地球で生活しています。同種、異種間でコミュニティーを形成しつつ共存、生存しているという視点を持ちながら研究を進めていくことが益々求められていると感じています。

 今回は、一般演題に応募された方々にポスター討論だけでなく、できるだけ口頭での発表の場も提供できればと思っています。学会に参加してポスターや口頭で発表することの大変さやおもしろさを研究初心者にこそ体験していただきたいという一途な願いです。そもそも学会は研究初心者、脂ののった中堅研究者、指導的な立場のシニア研究者が形成するOne Healthではないでしょうか。
 本総会は久々の日本での現地開催となる日韓微生物学シンポジウムも併催される予定です。会期もそうですが、様々な点で変則的な面が出てくるとは思いますが、皆様方からご指摘、ご指導いただき、今後の日本細菌学会の発展のために微力ではございますが貢献できればと思っております。